株式会社日本海洋生物研究所
陸水域のベントス(底生動物)には、貝類、ミミズ類、ヒル類、エビ類、カニ類、昆虫類などが含まれます。この中でも水中に生息するカゲロウ、カワゲラ、ヤゴなどの昆虫類は水生昆虫と呼ばれ、ほとんどの種類が成虫になると陸上に出て、交尾をへて、水中に卵を産みます。一方で、ゲンゴロウやミズカマキリのように一生を水中で過ごす種類もあります。水生昆虫は陸水のあらゆる水域に生息し、流速、溶存酸素量、底質の性状などの環境条件に応じて、底石の表面に張り付いているもの、砂泥に潜っているもの、水面に浮いているものなどさまざまな生活様式をとっています。また、その摂餌方法も多様で、捕食タイプや藻類などの剥ぎ取りタイプなどが知られています。
水生昆虫は魚類の餌として重要なばかりでなく、水質汚濁などの指標性があるため、動物相から水域環境の状況を推し量ることが可能です。多様な生活様式をとる水生昆虫類の調査は、目的に応じて定量採集、定性採集を行います。定量調査は、サーバーネットや採泥器を使って一定の面積からサンプルを採集します。定性調査は、調査範囲に生息する底生動物の種類数を把握するために、Dフレームネットなどを使って、瀬、淵、流心、岸辺、水草帯、泥底、砂底、岩盤などできるだけ多様な環境から生物を採集します。採取したサンプルは室内へ持ち帰り、処理を行った後、顕微鏡下で種の同定を行います。