株式会社日本海洋生物研究所
海域に生育する植物は海藻と海草に大別されます。海藻には根・茎・葉の区別はなく、根のように見える部分は岩に固着するためのものです。一方、海草には陸上の植物と同様に根・茎・葉の区別があり、根からは養分を吸収します。広義ではベントスに含まれ、付着生物としても出現しますが、ここでは一般的な環境調査項目で扱われる海藻・海草として、潮下帯程度以深に生育する海藻・海草類を指します。
海藻・海草類が多く生育している場所は藻場と呼ばれ、一部の魚介類の産卵場や稚仔魚の育成場所としての機能を有しています。さらに、近年では炭素を吸収・貯留するブルーカーボン生態系の主要な構成要素として注目を集めています。一方、磯焼けと呼ばれる藻場の衰退は日本全国から報告されており、海藻・海草の生育状況を知ることは極めて重要です。
海藻・海草類は、付着生物と同様、対象箇所に方形枠を設置し、枠内の生物を目視観察、写真撮影、採取することで、その生育・生息状況を把握します。また、調査ラインを設定しライン上を動画撮影することでライン全体の海藻・海草類の生育状況を記録する場合や、採取することによる藻場への影響をなくすために、水中で海藻・海藻類の株数、葉長等を記録することもあります。多くの作業は基本的に潜水士によって行われます。
採取した試料は、同定、種別の湿重量を測定します。種によっては葉の断面や細胞の配列等を顕微鏡で観察し種の同定を行います。